#03 東久保貴之 長野県小県郡長和町

学生時代の思い出の地に協力隊として再び訪れる

「長和町とは着任前から縁がありました。東京農業大学の学生だった頃、現地調査の一環でこの地に何度も訪れていたんです。東京で生まれ育った自分にとって、田舎の大自然を体験できることは毎回、感動の連続でした」

長野県小県郡長和町の地域おこし協力隊員、東久保貴之さんは、自身の活動地についてそう語る。

「ずっと続いてきた学生当時のつながりから、長和町が協力隊員を募集していることを知りました。市町村合併や人口減少で町に元気がなくなってしまったと聞いて、自分に何ができるかはわからないけどやってみよう、という気持ちがわいたんです」

水との出会いからチョウザメの養殖へと展開していく

湧水を利用した生簀 湧水量は1分間で3.5トンにものぼる

「活動二年目になる頃。とある方が所有している生簀を見る機会がありました。その生簀の水がとにかく澄んでいて綺麗だったんです。なんでも、すぐ脇に湧水池があって、水質も水量も申し分ないとのこと。そんな好条件ながら、長らく魚を飼うのをやめていて、生簀はほぼ放置状態だということでした。こんなに綺麗な水が使えるのに、もったいないな、と感じましたね」

その水こそ、長和町の名水として知られる黒耀の水。日本一ともいわれる超軟水に惹かれた東久保さんは、もともと持っていた知識からチョウザメの養殖を思い立ち、実行に移す。

「馴染みのない魚ということもあり、始めた当初は周囲からの心配の声がたくさんありました。しかしながら、町の新規産業としてメディアに取り上げられるようになると、応援してくれる方がだんだんと増えていきました」

任期中に起業 『古代黒耀蝶鮫』としてブランド化

水温の変化に敏感なチョウザメ
黒耀の水とは相性が良いという

現在は、「ドリームウィングス合同会社」の代表社員としての顔も持つ東久保さん。主事業は『古代黒耀蝶鮫』の養殖と販売。食用魚として県内外のレストランやホテルに出荷している。

「チョウザメはサメではなく、古代魚の一種。淡水魚特有のクセや臭みはなく、さまざまな料理に使える魚。特徴ある商品をきっかけに長和町の認知度が上がれば、もとからある農産物や加工品の応援にもなる。自然豊かな土地の価値をフルに活用して、わが町を盛り上げていきたいです」

2018年11月20日