もぐりん

酒出 佐登美さん(北海道札幌市出身)
2003年に埼玉県から軽井沢町へ移住。保育士の仕事をしながら、家庭菜園を楽しんでいた。  2008年に味噌作りを教えるボランティア団体『もぐりん』を発足。2011年に御代田町に1反の畑を借り、仲間と自然栽培を始める。  農作業を楽しむ酒出さんを見守っていたオーナーが「そんなに好きなら近くに住めばいい」と土地を譲ってくれたので畑の正面に家を建て、畑も拡大した。  2018年には保育士をやめて畑優先の生活に。酒出さんの育てた野菜は自宅前やマルシェなどで販売をしている。

畑がいろんなことを教えて気づかせてくれる

酒出さんにとっての農とは

もぐりんの畑(もぐファーム)で自然栽培を行う今年の仲間たち。
もぐりんの畑(もぐファーム)で自然栽培を行う今年の仲間たち。

畑って不思議で、嫌な気持ちやケンカの声があるとシーンと静まっていて、喜んだり感謝していると畑も喜んで作物を育ててくれている。畑にいると精神的にもクリアになり、今までの私の常識とは違ったアイデアも浮かんで、やってみるとうまくいったり。

種まきもとっても大切。ひとつひとつ丁寧にやることで、命と向き合うということがだんだんとわかってきた。いるだけで気持ちいい、そんな畑に変わってきている。

昔の人がそうだったみたいに、農が生活の基本だと思っている。農が教えてくれることと大事に寄り添っていければ、みんなが幸せになれる暮らし方ができるんじゃないかと思う。

酒出さんは有機肥料や農薬に頼らない自然農法で野菜を育てている。固定種の種を自家採種でつなげることで、その土地にあった野菜となっていく。年間60〜100 種類程の野菜を育てる。

昨年のBIOマルシェ(小諸市)での出店の様子。
昨年のBIOマルシェ(小諸市)での出店の様子。

大豆の栽培を始めたばかりの頃は、県外から貰ってきた種がうまく育たなくて。でも小海町の小山さんというおばあちゃんから貰った種はすぐに芽が出て、寒くなったらバッと枯れて、ちゃんと大豆になった。

小山さんが40年ほど自然栽培していた名前がわからない古来種。大豆(種)の遺伝子が、標高や季節感が小海町と似ている御代田町の土地と合ったみたい。その種をつないでずっと育てている。

からだもこころも満足する野菜

収穫する時に、喜んで食べてもらえる人に届くようにと想って収穫すると野菜も喜ぶから、美味しさが全然違うと聞いたことがある。だから収穫する時は「ありがとう」と思いながらひとつひとつ採るので、えらく時間がかかっちゃって。マルシェには毎回遅刻しちゃう(笑)。

野菜が持つミネラルは通常なら16種だそうだけど、無肥料・無農薬で、29種のミネラルが含まれる野菜を育てることが今年の目標。生命エネルギーがパンパンで、からだもこころも満たされる野菜づくりを目指したい。食べる人がしあわせになってくれることを想って、野菜さんと話しながら畑にいます。

手作りの食べ物で元気な子供たち

ボランティアを始めたきっかけは

夏に収穫された自然栽培の野菜。
夏に収穫された自然栽培の野菜。

私の子供たちが元気すぎて周りのお母さんに「どうしてそんなに元気なの?」って聞かれることがよくあって。食べる物は手作りするように気を配っていることを伝えたら、私にとっては普通のことだったんだけど、新鮮だったみたい。「なんでも自分で作れるんだ。それじゃあ、お味噌作り教えて!」となって。公民館の調理室が無料で借りられるから『食育ネットワークもぐりん』としてボランティアに登録したのが始まり。

要望があればメンバーにメールで活動日を連絡して、参加できる人がやるという感じの自由なグループ。

学校の授業やクラブで味噌作りや料理を教えたり、畑を一緒にやったり。依頼があればどこにでも行くの。個人のおうちにかまどご飯を炊きにいくこともあるし、自宅でもワークショップをやったり。食事を出す時にはうちの野菜をできるだけ使うのだけど、エネルギーの高い野菜、ちゃんとした調味料を提供したいと考えている。

このように必ず食べることにつながる活動をしている。

気持ちが楽な暮らし方

『食』が大切だと考えていらっしゃる理由はありますか

もぐりんの畑はガッテンセミナーの開催地のひとつ。セミナーでじゃがいもの種植えを行っている様子。
もぐりんの畑はガッテンセミナーの開催地のひとつ。セミナーでじゃがいもの種植えを行っている様子。

保育士という立場から子供たちを見ていると異変を感じていて。生活環境が便利な方、便利な方へと向かって何でも簡単にできるようになったことで、問題や不満と向き合う力が弱まったり、コミュニケーションが足りなくて心が置き去りにされてしまうのだと思う。精神的に弱っている子供や先生がいるのも、そんな環境や便利だけれど添加物が多かったり、エネルギーの弱い食べ物が影響しているんじゃないかな。畑を始めた経緯にはそんな思いもあって。昔の人たちは今みたいに便利なものは少なくて自分たちで何でも作って生活していた。そんな暮らし方が私には合ってる。『こだわっている』とよく言われるけど、昔の人はやっていたんだからそんなことはないんじゃないかな。

今の生活に疲れて弱っている人に「こういう暮らしができると気持ちが楽だよ」と伝えたい。それには言葉よりも、実際に来て見て体験して「これならできそう」「特別なことじゃないんだ」と、自分で感じてもらうことが大事なのかなと思う。

農業をやっている人も、やっていない人も、悩んでいる人も、畑にリフレッシュしに来てほしい。アーシング(earthing)といって、裸足で土の上に立つと、心も身体もリフレッシュできるから。

畑、食べること、人をつなげたい

今後はどのような活動をされていくのですか

やりたいことはまだまだたくさんあって、新しいワークショップやイベント、畑でマルシェも開いてみたいし、近所の空き古民家を改築して人が集まれるような場所作りもしたい。「保存食研究会」と勝手に銘打って災害の時でも困らない干し野菜や豆、加工品を研究中だし、今年から小諸でお米にも挑戦する。畑、食べること、人をつなげるこの生活が本当に楽しいと思っている。


もぐりん

  • 基本情報
    • 代表 : 酒出 佐登美
    • 従業員 : 1 名
    • 所在地 : 長野県北佐久郡御代田町
    • eMail : email hidden; JavaScript is required
    • Tel : 090-6523-1456
  • 取り扱い商品
    • 60〜100種程の無肥料・無農薬の野菜
  • 販売先
    • 自宅前、小諸学舎(小諸市)、 BIOマルシェ(小諸市)など
  • ホームページ
2019年5月18日