simeco

小金澤 儀朗さん(長野県佐久市出身)
かつては桃の花が一面に咲いていた佐久市平尾地 区。生産者の高齢化による後継者不足、高速道路開通 に伴う開発などにより桃の木は減っていった。儀朗さ んの祖母しめこさんも桃の生産地を守ってきた一人で ある。儀朗さんはしめこさんの意志を受け継ぎ、屋号 を「simeco」とした。4年目を迎え、農業の楽 しさや自然の厳しさ、農業を通じて得た人との出会 い、子どもの誕生など濃密な経験を糧に桃づくりに 励んでいる。写真で見た桃源郷の復活を夢見ながら。

ばあちゃんのいた畑

就農のきっかけは?

例年より遅いが色づき始めた桃
例年より遅いが色づき始めた桃

もともとうちのばあちゃんが栽培をしていて、亡くなったのをきっかけに始めました。ばあちゃんは大変な所 を見せずに、人の手も借りないというような考えの人でした。それでも収穫時は大変なので手伝っていましたが、 今思えば収穫なんてごく一部で、それ 以上にやらなくてはいけないことが山ほどあり、これを一人でやっていたのかと驚かされました。 ばあちゃんが亡くなった時に、桃の木を切ってしまおうかという話が出 たんですが、 25年も生きてきた木を切ってしまうのか、そして桃の木がここから無くなってしまうのかと思った ら、利益のこととかは考えずに引き継 ぐことを決めていました。

突然農家になって、大変だったのではないですか?

桃の色づきを確認しているところ
桃の色づきを確認しているところ

始めた当初は素人だったので、草刈りをしている時も一部に花が咲いていると「ばあちゃんが意図的に植えた のでは」と考え込んで手が止まったり、 剪定するにも「ばあちゃんならどこを 残していたんだろう」なんて考えていましたが、近所の先輩桃農家のおじさんの話を聞いたり、やってることを隣 で見ながら覚えたり、木の切り方なんかを教えていただきながら栽培を覚えて、少しずつ自分の考えや、やり方を確立していきました。

ばあちゃんは周りから「しめちゃん」と呼ばれ、とても人望がありました。だから「しめちゃ んの孫が畑やるなら教えてあげるよ」 とみなさん快く教えてくれました。 あとは講習会に行ったり、ひたすら本を読んだりして勉強をしています。それを場所ごとに反映させ少しずつ作り方を変えたりして、場所や品種ごとに適した栽培を行うようにしています。

ひょう 昨年は雹害、今年は5月の遅霜と6月の雹害と毎年のように天候に 悩まされているこの地域の農業 小金澤さんも実が傷になったり 実らなかったりと自然を前に苦戦 を強いられることがある。そんな 時、小金澤さんはどうしているの か心境も併せて聞いてみた。

雨除けシートの様子
雨除けシートの様子

去年は雹が降った後はしばらく何 も出来なかったというか、する気が起きなくなりました。気象レーダーとか 見てても全然予測が出来なくて、急に積乱雲とかが出てきて、それから対応するという流れになってしまいます。

防護ネットなどは栽培の都合上いつも掛けとくわけにはいかないですし、か と言って降ってきてからでは間に合わ ないです。霜も対策はあるのですが、 コストや時間を考えたらなかなか難しいです。

昭和 30 年頃に桃源郷と呼ばれて た景色
昭和 30 年頃に桃源郷と呼ばれてた景色

また、昨年の台風で傷ついた葉っぱなどから木に入り込んだ病気が越冬して、今年症状を出し始めたのもあり、マイナスの部分が一気に来たという感じです。リスクなんて何十年に1度を考えてればいいかと思っていましたが、今はそれらの対策をたてていくことが大事な時なんだなと感じています。

霜で実がなりにくかった分、この時期摘果に追われて人手が必要になるのですが、その時間が今年は少ないですね。昨年の雹害は傷が表面についただけで味には影響がなかったので、何段階かにランクを付けて、ランクごとに価格を変えて個人のお客様に買っていただきました。市場だとちょっとした傷でもだいぶ価格が落ちてしまうので、こちらとしてはなるべく価格を下げたくないですし、お客様としてはちょっ と傷があるだけでお手頃な価格で買え るならということで、沢山の方に買っ ていただけました。

特に新たな販売としては、SNSの発信だけで関西方面 から大量の発注をいただき、奈良〜三 重にかけて直接納品に行きました! 納品の 日前に収穫を始めて不眠不休 でやったので、納品後は意識が朦朧と してました(笑)。 ただ、これをきっかけにうちのこと を知ってくれた方も増えましたし、お 客様の顔を知ることができたので、梱 包や納品をする時はより気持ちが入る ようになりました。 個人対応は時間をかけてやるので、 なかなか一気には増やせないですが、 徐々に増やせればいいなとは思います。

農業と家事と、働き方改革

そんな中で、昨年結婚をされ、お子様が産まれましたが、今までと変わったことはありますか?

子どもが産まれる前は、好きな時間に、時間があればあるだけ生産に 費やしてきましたが、奥さんも勤めの 仕事に復帰したので、何度も話し合いを重ねて、家事や子育ての分担を決めることにしました。家事と農作業の 時間が半々くらいになるのですが、生産量は増やしていきたい。そのために作業環境や動線を整えて、納品先も 個人と組合などのバランスを考えるな ど、いかに効率よく農作業をこなして いくかを前より考えるようになりま した。

今後の目標や希望はありますか?

昭和30年頃の写真を見るとこの辺りは桃の木がいっぱいで、桃源郷と呼ばれるほどだったみたいです。向こう に見える高速からちょうどこの辺りの畑が見えるんですよね。だから、もっ と桃の木を増やして、花の時期にはきれいな桃の木がたくさん見られるよ うにしたいですね。今は後継者問題な どでやめようとしている桃農家さんの話などをよく聞いて、自分が引き継いだりもしています。この地域の人や栽 培している人の想いなどが木に込められていると思うので、そういったものも引き継いでいきたいです。

イベントの出店は苦手という小金澤さん。それでも人との出会いやイベントの空気感を楽しんでいて、出店の際は 趣向を凝らした演出やレイアウトを施している。移動図書「山羊の詩」を運営しているお兄さんと共同のイベントや、佐久市中込の「RENGELAND MORNING MARKET」 などに出店している。


simeco

    • 基本情報
      • 代表 小金澤 儀朗
      • 従業員 3 名(両親と従兄弟)
      • 所在地 長野県佐久市
      • Mail email hidden; JavaScript is required
      • Tel 090-2403-7340
    • 取扱商品
      • 桃・プルーン・キウイフルーツ・お米
    •  販売先
      • 〈ショッピングサイト BASE〉 https://simeco.theshop.jp
    • SNS
    • ホームページ http://simecofarm.wixsite.com/ simeco

2019年11月16日