雲の上のトマト

強い日差し、乾いた空気、激しい気温差。野辺山の環境を最大限に引き出して育てた、”雲の上のトマト”は、土地の個性と作り手の個性がかけ合わさり誕生した宝石のようなトマトです。

”右向け左”のトマト

この地域はレタスや白菜が盛んですが、何故トマトを作ろうと思ったのですか?

レタス、白菜ではないものをと考えて、これを作ってみようというものをいくつか頭の中で計画していました。その中でこれに賭けてみたいと思ったのがトマトでした。

長いハウスが何棟も並ぶ農園のハウスの中は、エネルギーあふれるトマトの香りが満ちている。
長いハウスが何棟も並ぶ農園のハウスの中は、エネルギーあふれるトマトの香りが満ちている。

日本全体を見て、一番内陸で標高が高くて、乾いている所というと、本州の中でも野辺山あたりはトマトの原産地の南米に似ているのかなあと考えました。だったらこの辺でもいいものが作れるのではないかなと勝手に思っていました。前例がないのであれば、誰かが先に作らなければ後は続かないです。なかなか難しいですね。〝右向け左〞の人がいてもいいと思いますよ。でないと、この土地での農業の多様化や、発展はないのかなという強い覚悟を持ってやり始めました。若い人にもどんどんチャレンジして欲しいですね。

ルーツはどこで養われたのですか?

たぶん高校だと思います。地元ではなく、全く誰も知り合いのいない高校に行ったので、自分の立ち位置や意見、主張をもっていないといけなかったという経験が大きかったです。

色々な要素を秘めた土地

こちらのトマトは安定した甘さや旨さがありますが、作り方に特徴やこだわりはありますか?

宝石のように輝く色鮮やかなトマトの詰め合わせ。仕上げにマイクロミニトマトを乗せて演出。
宝石のように輝く色鮮やかなトマトの詰め合わせ。仕上げにマイクロミニトマトを乗せて演出。

さほど特別なことをやってはいませんが、企業秘密です!知りたい人は弟子入り五年ですね(笑)。でも五年で出来たらすごいことかもしれません。作り方を教えてくれるトマト農家さんがなかなかいなくて、ほぼ独学で育てました。種屋とかは、情報を持っていたりしますので聞いたりしました。試験場の人が来たりすると、「ここの作り方は独特だ。個性が強いですね」などと言われます。

ここの環境は、寒い時はマイナス20℃まで下がったり、標高1300m以上と日本でトップクラスだったり、色々な要素を秘めた土地で作るのですから、個性は当然出てきます。

生産から販売までを自己完結でとおっしゃっていましたが、販路はどうやって探しましたか?

大人気商品「雲の上のトマトジュース」にラ ベルを貼る。
大人気商品「雲の上のトマトジュース」にラ
ベルを貼る。

どこに出していいか最初は全然わからなかったので、東京や静岡などありとあらゆる市場に行ったりしました。市場に行った帰りに、大手の果物販売店やデパートの生鮮売り場に飛び込みで営業もしました。名刺と試食用のものを渡して帰ると、次の日には発注をいただいたこともありました。あとはホテルのギフト等にも使っていただいてます。個人での一箱とかは難しいのですが、基本言われれば断ることはしたくないなと思います。生産量を絞って、品質重視で生産していますので、価格は決して安くないですが、いいものだと感じていただければ嬉しいですね。

雲の上の野辺山

“雲の上のトマト”と面白いネーミングですが、どのような経緯でついたのですか?

知り合いのパイロットが、山梨方面から電話をしてきて、「高見澤がいる野辺山に行こうと思っているんだけど、こっちから見ると雲がかかって見えるけど、天気はどうなっているの?」と言われ、「えー、こっちは晴れてるよ」となって、要は下から見ると山の中間に雲がかかって見えるみたいで、その瞬間に「名前決まったわ!野辺山は雲の上かぁ」となりました。

モノ作りへのこだわり

高見澤さんが目指しているところはどこですか?

アトリエのような作業所には、高見澤さんお手製の飛行機が並ぶ。一度飛ぶと満足し、次の飛行機の制作に取り掛かる。
アトリエのような作業所には、高見澤さんお手製の飛行機が並ぶ。一度飛ぶと満足し、次の飛行機の制作に取り掛かる。

「モノ作りがなぜ始まったのかを再確認したい」ちょっと分かりづらい表現かもしれませんが、東京のCM制作会社に勤めていた頃はクライアントの発注通りのモノを制作し、短期間世に出たらもう新商品に切り替わってしまい、「俺の作品ってカートリッジじゃん」と思って、そこに自分の時間(命)を費やすよりも、自己責任の中で考え、生産して、販売先まで見届ける。そこで得られた評価が次に繋がるので、ある意味トマトは作品と思ってモノ作りしています。安心・安全な食べ物という人がいるけれど、安全な食べ物は当たり前のこと。「イギリスの女王は女性です」(笑)と言っているようなものです。それは前提として、基本は「おいしければいいじゃん」と思います。甘い味が今好まれたりしますが、甘さだけではないトマト本来の味が出せればいいなと思います。


雲の上のトマト

  • 基本情報
    • 代表 高見澤 憲一
    • 従業員 2 名
    • Mail email hidden; JavaScript is required
    • 所在地 長野県南佐久郡南牧村海ノ口793
  • 取り扱い商品
    • 「ルネサンス」(大玉):古くからの品種で皮が薄くて、爽やかな酸味と強い香りで肉質がきめ細かい。「フルティカ」(中玉):濃厚な旨みと酸味。「アイコ」(ミニ):ゼリー質が少ない甘いトマト。他多数  「雲の上のトマトジュース」(三種類)
  • 販売先
    • 南牧村農畜産物直売所、小海リエックスホテル、ストローハット、八ヶ岳高原ロッジ、小田急OX( 東京都)
2017年11月16日