宮嶋林檎園

昭和2年に初代が小諸市森山の桑畑の中にリンゴを植えたのが始まり。その後、栽培面積の拡大、オリジナル品種の開発、ハードサイダーづくりに取り組むなど、リンゴへの情熱は深い。ベテラン農家の両親と、一見ストリートシーンで活躍していそうな息子2人の親子3代に渡り引き継がれている農園は、常に挑戦と楽しさに溢れている。

宮嶋佐一さん

栽培の特徴としては、新わい化栽培といってヨーロッパのほうで多い栽培方法になります。枝をあまり伸ばさない、木を暴れさせない、葉っぱを小ぶりにするのが特徴で、通称「静かな木」と呼ばれています。

葉が小ぶりのため、太陽をあまり遮らないので、葉を摘まずに養分をしっかり送れます。木があまり大きくない分、上から下まで同じ品質で出来るということです。

この地域は気象が荒く見た目の綺麗なりんごができづらいので見た目より味にこだわった栽培を心がけています。

浅間クチーナの誕生

浅間クチーナ。加工用だが、酸味のバランスが良く、生食でも美味しい。

長野県果樹研究会の中の育種同好会に参加したのがきっかけで、育種に興味を持ち、およそ30年以上前から自分でも交配をするようになりました。何種類もやった中で栽培に適していたのが酸味が強く、当初は妻のアップルパイ用にしていました。

時代と共に加工用リンゴの需要が高まり出した時、知り合いの試験場職員の妹さんがパティシエをしていて、このりんごでタルトタタンをつくったら、他の品種より良かったという事で品種登録しました。

名前は優作がつけたんですが、小諸の知名度をあげようという気持ちも多少あったので、ローカルな感じをイメージして「浅間クチーナ」という名前にしました。

親から子へ

まさか2人ともやるとは思わなかったです(笑)2人でやるならそれはそれでいいかなと思います。自分たち(夫婦)は「農業は楽しまないと意味がない。楽しみながら挑戦していかないと新しいものが見えてこない」という考えでやっているので、そんな思いがみんなのベースにはあるのではないでしょうか。


農業大学を出て、既定路線で家の農園に入った伸光さんと、浪人中に農業をやると決めた優作さん。子どものころはほとんど手伝いなどしなかった2人が就農してから18年目と11年目。農業を始めてみて現在の心境を聞いてみた。

宮嶋優作さん(左) / 伸光さん(右)

伸光 :(楽しさと苦労とでは)圧倒的に楽しさが多いですね。学校で学んだことがほとんど通用しないくらい現場で学ぶことが毎年あって、その年の反省を翌年に活かそうとしても、天候や場所、環境によって異なったりするので経験したことすべてと、親の経験を活かさないとこの地域でリンゴ作りはできないなと思うと奥が深くて、それが楽しいです。

優作 :  自分は農業をやると決めた時に、兄には相談せずに帰ってきたんです。

伸光 : そこはひどいよね(笑)

優作 :  両親は反対することなく受け入れてくれました。家に入る前に果樹試験所に行くことを勧められたのですが、そこで勉強はもちろんだけど、「果樹を作っている同じ仲間をつくってこいよ」とか「研究者の人としっかり繋がってこいよ」と両親に言われました。家に入ってからは、当初は体力的にしんどかったですが、慣れてくれば余裕も出てきて、リンゴを通じて繋がりができたことや、世界へと視野が広がったことでリンゴが自分のアイデンティティになっていることを実感しています。

リンゴ作りに楽しさを見出した2人は次のステージとして、アメリカで盛んなリンゴのお酒「ハードサイダー」に着手していった。

ハードサイダーを作るきっかけは?

ゴルフ場のカートをカスタマイズして造られた集荷車。簡単操作で楽々。

伸光 : 2012年に長野県果樹研究会青年部でシードル(リンゴの発泡酒)を作っていた時に、醸造先を変えたら材料は同じなのに全く違う味になったことが不思議に思い、シードルの本場であるフランスに行きたいと果樹試験場の恩師であり、栽培に関しても信頼のおける世界的に有名なリンゴ研究者の小池洋男さんに相談したら、「伝統的なレシピで作るシードルよりもアメリカのハードサイダーのほうが面白いんじゃない?」といわれ、すぐ行きました(笑)

アメリカの中でもハードサイダーが盛んなポートランドに行ったら種類が豊富にあって、ビールと同じ感覚でみんな買っていくんですよね。自分たちも買ってみようと思って、夜中にドキドキしながら宿泊していたホテルの近くのガソリンスタンドに行きました。そこで売っていた中で1番かっこいいボトルのサイダーを買ってみたらすごい美味しかったんですよ。

「あおぞらバル」出店時の様子
主催者としてのイベント。毎年8月頃停車場ガーデン(小諸)にて開催。

奇遇にも訪問した醸造所の中にそのサイダーの製造元があったから、すぐ連絡先を交換して、翌年には「学ばせてほしい」と連絡をとり、再度訪問しました。その時教えてくれたのが、醸造家で地元ではサイダーシェフ、サイダーキングと呼ばれているナット・ウェスト氏、彼の影響が大きいです。

彼のサイダーの中に日本由来のりんごのみで作ったものがあって、ラベルに僕らの名前を入れてくれたのですが、彼から「日本でもこんなサイダーが作れるんだぞ」って挑戦状と課題をもらった気がします。だから自分たちも挑戦は続けて行きたいと思ってます。

サノバスミス・ハード・サイダー

果樹研究会で知り合った小澤果樹園の小澤浩太さんと化学のスペシャリストでお酒の知識も豊富な池内琢郎さん、他にもデザイナーなどの仲間とチームを組んでオンリーワンのハードサイダー作りを目指している。


宮嶋林檎園

  • 基本情報
    • 代表 : 宮嶋 佐一
    • 従業員 : 5 名
    • 所在地 長野県小諸市森山964-1
    • Mail : email hidden; JavaScript is required
    • Tel : 0267-27-0483
  • 取扱商品
    • りんご、プルーン、りんごジュース、 ハードサイダー
  • 販売先
    • 直売所「浅間のかおり」(小諸市)、農園直売
      ※ハードサイダーは直売かインターネット販売
  • ホームページ
2018年11月12日