でんぷく農場

田嶋克次さん(東京都北区出身)
特撮ヒーローが大好きで飛び込んだ映像制作の道。しかし、担当で制作していたのは農業番組だった。色んな生産者に会うようになって刺激され、有機農家の道へと進んで10年。ヒーローと同じくらい好きだった昆虫や生き物を身近に感じながらお米作りに励んでいる。

農業番組制作から農家の道へ

でんぷく農場の名前の由来とはじめたきっかけは?

キラキラした目で楽しそうに田んぼの生き物を捕り、見せてくれた。

自分の田嶋の「田」と妻の旧姓の福田の「福」を併せて田んぼに幸福がくるようにと「でんぷく(田福)農場」にしました。始めたきっかけは、前職でテレビの農業番組を制作していたことです。

その当時お米は斜陽産業と言われていたので、有機野菜を作ろうと思い、ある程度まとめて作れ、高く売れるものとしてトマトを選びましたが、里親農家での研修の米作りを通じてその面白さに魅了されて、お米を始めました。今作っているお米の種類はミルキークイーンとコシヒカリと、今年から酒米を作って地元の酒蔵に卸しています。

納品先はどんな場所ですか?

娘さんが小学校1年生の時の夏休みの自由研究。

納品先としては、JAの臼田有機米部会に所属しているのでJAが多いですが、その他にも地元の飲食店やホテル、あとは自然食品のお店などに卸しています。飲食店やホテルなどは直接感想や評価が聞けるので、「美味しい」とか「甘い」という声をいただいています。

直接卸しているところには現場に来てもらって、設備や栽培方法などを見てもらっているので、それを踏まえて味への評価につながっていると思っています。生産者の顔が見えるというのはそういうことかなと感じています。

生態系とその循環を大切にして作物の力を引き出す

こだわりはありますか?

雑草抜き。手作業のため、足腰への負担は大きい。

循環させていくことを大事にしています。
化学肥料は即効性があり、あげればほぼ効くので同じ時期のものでもよく伸びているし、色も青々した稲になるのですが、有機質肥料は土に施して、微生物が分解して、根がすえるようになって始めて肥料が効いてきます。それも気候の変化や環境によって変わってくるので、今までの経験による予見や傾向の分析が必要になります。

手間暇はかかりますが、作物の持っている力を最大限に引き出す為に、藁を土に返して地力をつけて、また栽培しての繰り返しの中で、不足している栄養を必要最低限に補ってやって、苗が自分の力で健やかに自然に成長していけるようなスタイルをとっています。

田んぼはまるで水族館

農薬も使わないので草取りなどかなり大変だと思うのですが、なぜ有機栽培を続けるのですか。

1、ホウネンエビ:豊年蝦と書き、これが良く発生する年は豊作になるといわれている。2、カブトエビ:1億年以上も前から変わらぬ形で「生きた化石」ともいわれている。エビ類ではない。

一部は除草剤を使っているところがあるのですが、使っているところと使っていないところでは田んぼの中の生き物の豊富さが違います。子どもを田んぼに遊びに行かせれば、ちょっとした水族館的な感じの盛り上がりになりますね。

僕は東京育ちなので、昆虫とかオタマジャクシをお店で買ってたんですよ。結構いろいろ置いてあって、ゲンゴロウやカマキリの卵までありました。それが長野では全部田んぼにいて、買ってたのがなんだったんだと思っちゃいます(笑)。田んぼを増やすことで生き物たちも増えるので、その環境を維持したいというのが有機栽培を続ける1番の理由ですかね。ただし、増やした田んぼの全てを有機栽培でというのは残念ながら今は無理ですね。

師匠との出会い

その辺は割り切りながらやっているんですね。

収穫前の稲穂に囲まれて。

僕の里親であり、農業の師匠である大塚献三さんが「気張ってやるのはのはやめよう。やれるところからやっていって、広げられれば広げ、ファンがついてくれればいいんじゃない」という考えの人だったので、おかげさまで無理なく長く続けられているのかなと思っています。理想とかは色々ありますが、自分たちのぺースで徐々に広げていってます。

師匠は、本当に柔軟な考えの人で、栽培方法なんかもいいなと思ったものは後輩がやっていることでも、すぐに取り入れて試してましたね。それでいてオープンで、すべてさらけ出しています。いい人に出会えたなと思っています。

どうやって出会えたのですか

全国有機農業者マップというのがあって、そこからこの人がいいんじゃないかという人をそれぞれ見つけて、実際会って決めました。子どもがいて家族経営でやっていたので、とても参考になりました。ちなみに師匠は妻が選んだ人です。  尊敬できる師匠がいて、大好きな昆虫に囲まれて、常に農業へのモチベーションMAXな妻と一緒に農業に没頭できるっていうのは最高の環境です。


でんぷく農場

  • 基本情報
    • 田嶋 克次・綾子
    • 所在地 佐久市田口3265-3
    • Tel  0267-82-5078
    • Mail katsuji@yc4.so-net.ne.jp
  • 取り扱い商品
    • 水稲・ハウストマト・ズッキーニ
  • 販売先
    • 地元農協と市場、 直売(マルシェ・佐久市)

佐久市にある 「レストランマルシェ」では、
でんぷく農場のお米を美味しい料理と一緒に味わえます。

田嶋さんとの出会いは?

レストランマルシェ 原正利シェフ

田嶋さんがお米の営業で店に来たのが最初です。その時に田嶋さんが「こだわって米を栽培しているのでぜひ使ってもらいたい」と言ってきたので、食べてみると「これだったら納得できるな」という味でした。

さらに話してみると感じも良く、発想力も豊かだったので、この人の作ったものなら大丈夫だと思い、使うようになりました。その後、田んぼに行って栽培風景を見たら一層美味しさや安全性に確信が持てました。

他にもトマトも使っています。トマトは完熟して1週間くらい経ってもしっかりとした形を保っています。

田嶋さんの魅力は何ですか?

「ぴんころセット」

お米や野菜作りへの熱意が伝わってきますね。テレビの番組制作で農業に魅せられて、自分も作りたいと思ったということなので、作ったものに熱というか心がこもっています。 あとはまっすぐな人柄がいいですね。

写真 :「ぴんころセット」
佐久市からの提案で健康長寿をテーマに開発されたメニュー。低カロリーで塩分控えめ。
この日は、でんぷく農場の白米の上にチキンソテーと、地元産野菜を使ったサラダが乗り、カリッと香ばしく焼かれたチキンの香りと、旨みがライスをより一層美味しくしている。また、地元野菜を使ったサラダやスープの味は力強く、塩分控えめでも十分な味に仕上がっている。
〜写真の使用食材〜
トマト(でんぷく農場)、カラシ菜(いそべジ農場)、ノーザンルビー(ジャガイモ)のスープ(いそべジ農場)
カリッと香ばしく焼かれたチキンの香りと、旨みがライスをより一層美味しくしている。また、地元野菜を使ったサラダやスープの味は力強く、塩分控えめでも十分な味に仕上がっている。

お店のこだわりは?

自分の子どもがアレルギー持ちだったので、食への安全をより考えるようになり、食材は生産者の顔や栽培方法、畜産であれば使っている餌まで見えるものをと意識しています。

あとは、有機で作られている地元野菜は素材の味がしっかりしているので、なるべく使うようにしています。


レストランマルシェ

  • 所在地 佐久市野沢261-3
  • Tel 0267-63-5477
  • 定休日:火曜日
  • 営業時間:
    • ランチ  11:00~14:00(ラストオーダー)
    • ディナー 17:30~:21:00(ラストオーダー)
  • 野菜だけでなく、チーズやパンも地元産を使用。 豊富な経験と地元に寄り添った料理で、幅広い年齢層に評判。店内やサービスも温かみがあり、居心地の良さを感じる。
2018年11月12日