佐久の市街地から北西に車で30分程のところにある300年以上の歴史をもつ春日温泉を、さらに奥に進んだところに “長谷川治療院” はある。そこで生活をし、働いているのは鍼灸・指圧師の長谷川隆広さんと、農業部で農業担当の妻の純恵さん夫妻である。隣近所に家はなく、シンボルとなる大きな2本の木の下には2匹の犬が。 ここで育った生き物はすべてストレスフリーなのではないかと感じてしまうような開放的な環境に囲まれて元気に走り回っている。
土地と出会い 解体から始まった家づくり
佐久市春日に移住してきたきっかけは?
純恵さん(以下:純)土地を買ったのは14年前で、住み始めてから11年目になります。夫は新潟県出身ですが、長野県が好きになっちゃって、最初は仕事の関係で軽井沢に住んでいたのですが、家を建てたいと思い土地を探していました。ちょうどそのタイミングでこの土地を知りました。
隆広さん(以下:隆)元々ここに建っていた家は、10年以上も人が住んでいなくて、廃屋同然でしたので、まずは解体から始めました。家の骨組みの解体だけは業者にお願いして、廃材やサッシ、畳などは処分場に自分たちで持ち込んだり、瓦はハンマーで砕いて家の周りに敷いたりしました。
純 : 家づくりも壁塗りは自分たちですべてやったのですが、10月くらいにやっていたので、漆喰が凍っちゃう前に終わらせないといけないから急いでやっていましたね。
隆 : 今となっては楽しい思い出ですね。(笑)
純 : 「・・・(笑)」
家が完成して、次は畑づくりかと思いますが、農業はいつごろから始めたのですか?
家づくりと同時に畑も始めました。やり始めのころはうまくいかなくて、2年ほど「くさぶえ農園」さんで農薬を使っていない有機栽培を勉強させていただきました。ですので、就農して9年目になりますが、ここでも無農薬で有機栽培を続けています。現在は少量多品目栽培で250種類ほどを、収穫時期をずらしながら栽培しています。
獣害対策、農業用水・農道の管理は夫に任せています。
隆 : 当初、畑の草刈りなども自分もやっていたんですが、草とハーブの違いが分からずに刈ってしまったり、ミョウガを抜いてしまったりしたことがあったんです(笑)。それからは畑の中には手を出さないようにして、土手や畔担当になっています。
野菜販売に プロモーションは不要
納品先はどういったところが多いですか?
納品先は飲食店や個人のかたです。飲食店は軽井沢、東京、大阪が多く、個人のお客様は東京から大阪にかけていらっしゃいます。ほぼ一年中、出荷できるように心がけています。
県外の納品が多いですが、プロモーションなどはどういう方法でやっているのですか?
純 : ほぼ口コミです。私、大阪で広告制作会社にグラフィックデザイナーとして勤めていたことがあって、企画から、制作におけるディレクションなどをすべて受け持っていました。そこで、モノを売るためには何が必要か、どんな仕掛けをすればいいのかをたたき込まれてたのですが、そこで感じたのは「優れたセールスプロモーションも商品力にはかなわない」ということです。よいモノを作っていれば人は放っておかないと信じているので、野菜の販売においてもプロモーションをしないと決めています。そうすれば自ずと商品力の向上に繋がっていくと思います。また、よい野菜を作るというよりも、神様に捧げものをするような想いで、栽培にも梱包や箱詰めにも心を込めて行っています。それは買ってくださる方に敏感に伝わると思っています。お客様に長く継続してご利用いただけている理由はそこかもしれませんね。
自然の”理(ことわり)”が美しい野菜を生み出す
農業の魅力は何ですか?
純 : お客様から「野菜が美しい」とよく言っていただくのですが、そこを意識して栽培していることはありません。 自然の〝理(ことわり)〟に沿って生きている野菜自身がそもそも美しいんです。「日光を効率よく受け取るにはどうしたらいいか」「強い風に負けないために体を固くしなきゃいけない」とか、すべて理にかなった生きるための完璧なシステムが野菜本来の美しさになっていると思います。それはデザインにも共通していて、生活に溶け込むような合理的なものが長く愛されていますね。だから、野菜が生きていく理の中に農夫が寄り添っていくことが自然であり、野菜との対話が農業の魅力だと思います。
隆 : 遠くから作業風景を見ていると植物と妻がシンクロしているように見える気がしますよ。
長谷川治療院農業部
- 基本情報
- 長谷川 純恵
- 所在地 : 佐久市春日5908-257
- eMail : email hidden; JavaScript is required
- Facebook : 長谷川治療院農業部
- 取り扱い商品
- 多品目野菜 (農薬・化学肥料不使用)
- 販売先
- 飲食店、個人