橿山農園

橿山 和幸さん(小諸市滝原出身)
農業を始めた頃は実家の米作りを手伝いながら建設会社に勤務する兼業農家だった。10年前に専業農家になり、当初6アールだった水田は現在は約6へクタールとおよそ100倍に拡大した。増えた水田の中には、栽培ができなくなった生産者から引き継いだものも多い。また、密集した棚田が多いこの地域では道が狭く、機械が入りづらい場所もたくさんある。それでも前職の建設業の経験を活かし、重機を使って圃場の整備をしたり、草刈りや田植え、稲刈りなどの機械を駆使してほぼ1人で92枚もの水田を回している。地域の方々か ら引き継いだバトンを手に橿山さんは常に走り回っている

多様な地形に合わせた栽培の工夫とこだわり

耕作地を拡大していくなかでどのように効率的に作業をしていますか?

一通り見て回るだけでも1時間半くらいはかかるので、見回るコースは基本は上から下に向かってやりますが、前日から水を入れてる田があればそこを起点にしたり、周りの草の状況を見て草刈りが必要なところから見て回ったりしています。また、密集して1枚ずつが小さいような田は畦が狭くて歩きづらかったり、ブロックや水路が草で隠れてしまったりと作業をするにあたり危険や不効率になるのでこまめに草刈りをしています。

草の丈が長くなると田に日陰ができ、成長を妨げたり水を抜いた時に乾きにくくなる原因にもなります。そのため田植え後は草刈りが作業のメインだったりしますね。あとは、前職で培った技術を活かして、排水のために田の縁に掘る「よけ」や水を入れる掛口を直して水の流れをスムーズにしたり、田の崩れた箇所や通路を直したりと、自分で改修することによって作業効率が良くなるようにしています。

栽培に対してのこだわりはありますか?

「1つの田んぼで稲が同じ大きさに育ち、キレイに水平に並んでいること」を意識しています。その状態になるということは、肥料が均等に行き届いていたり、生育環境が整っているということであり、成長にばらつきが出なければ品質も統一していると考えられます。田の枚数が多いと、面積、陽の当たりかた、水温など場所によって微妙に違うので、それぞれの特徴を把握して、ばらつきがないようにすることは大切だと思っています。品質が安定しだした7年くらい前からお米のコンクールなどに出品したりもしていますが、その頃からより安定感と品質を向上させるために肥料や農薬の種類、使用量、回数を細かく記録しています。

お客様に安心して食べてもらうためにどんな土壌で、肥料や農薬は何を使っているかというのを明確にすることも大切ですよね。その結果、コンクールで賞を取ることで美味しいお米という証明になり信用にもつながると思います。今年は小諸市で開催されるお米の品評コンクールに合わせて、今までのデータに基づいて施肥の調整や、田植え稲刈りの時期を合わせています。

小諸市が開催している生産者の技術勉強会や講座にも参加されて変化はありますか?

講座などに参加してから、以前よりも周りの生産者と意見を交わすようになりました。

ただ聞いてきたことを鵜呑みにするのではなく、自分たちの環境に合わせていくにはどうすればいいのか、土壌検査の結果を踏まえて、米作りを左右する水や気温、標高など他の要因は品質に影響してくるのか、などを同じ地区の人と共有したり、他の場所の生産者と地域差があるかなどの情報交換もしています。生産者同士の交流や、お互い刺激しあっていいものを作るという意味では有意義だと思います。

地域と共に ブランド化へ

田を引き継いで、地域の生産を担っていく立場として感じることはありますか?

田のある滝原地区の土壌や水質の良さは栽培の中で実感しているので、この地域のお米をブランド化していくことを考えています。そのためにもこの場所で生産している若い世代の生産者さんと、それぞれにこだわりや思いはありますが、情報の共有や助け合いをしながら滝原のお米がたくさんの人に認知され、食べてもらえたらと考えています。 

受け継いでいくという意味では、自分の母校でもある水明小学校のお米作りの指導をもう何年もやらせてもらっています。子ども達がやるのは昔ながらのやり方で、手で植えて手で刈る作業になります。米作りの大変さや田んぼに落ちている稲も無駄にしない気持ちなどを養っています。農家にとってお米は食糧であり大事な収入源ですので、そういったところまで子どもでも知ってもらい、米作りや働くことの大切さを感じてもらいたいです。

小学校での稲作指導は子どもたちに教えながらも自分の仕事を振り返る良い機会でもある。

橿山農園

  • 基本情報
    • 従業員 1名
    • 所在地 小諸市
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  • 栽培品種
    • コシヒカリ
  • 販売先
    • 市内老人ホーム、個人
  • 出荷先
    • 永井農場
2022年12月3日