中島花き園芸

中島 和輝さん(佐久穂町出身)

佐久穂町のシンボルでもある茂来山を背に、祖父の代から3代目となる花卉栽培農家。米農家だった祖父が田んぼを花栽培に切り替えた。そして、父親の代になると町全体で施設を使っての産地化が推し進められ、いつしか町の一大産業になっていった。さらに和輝さんが引き継ぐようになると、世の中の花に対する需要や価値観も少しずつ変わり、多様化してきた。高校卒業後、フラワーデザインを学び、花屋に勤めた和輝さんは、その経験を生かし、栽培だけではなく幅広いニーズへの対応と自分の感性を大切に花の魅力を伝える。新たな世代が繋げる花作りへの挑戦は続く。

フラワーデザインからのスタート

幼い頃から花の栽培は見てきたと思いますが、実際にここで働き始めたきっかけはなんですか?

昔から親の仕事を見たり手伝ったりしていました。長男ということもあり、いつかは自分が引き継いでいくのかなと薄々感じてはいましたが、すんなりと花農家になるのも嫌だなと思っていたのと、とにかく東京の方に出て生活してみたいという思いもあり、フラワーデザインを学んでフラワーアーティストという道を考えるようになりました。

そして花屋に勤めて勉強をしているときに父親の病気を知り、佐久穂町に帰って栽培を手伝う決心をしました。3年目で父が他界し、経営を引き継ぎました。それまでは父に習いながらやってきましたが、1人になってからは近くの花農家の方や部会の方々にお世話になりながら技術や知識を身につけていきました。

多様化する花市場

昔と今で花市場ではどのような変化がありますか?

祖父の代は菊をメインに栽培していました。世代が変わると共に、少しずつかすみ草やバラ、カーネーションといった冠婚葬祭や母の日などの季節のイベントに使われるような花の生産を増やしていったみたいです。今は様々なイベントがあったり、花を使用したハンドメイドのクラフト活動をしている方の需要も高まってきているので、昔よりも多品目を栽培するようになりました。ここでは約20種類以上の品目を栽培していて、中には試験的に作っているものもあり、この土地や気候に適しているかを見極めてから栽培しています。

昔ならキレイでも生産量が少ない花は中々表に出てこなかったんですが、SNSなどの影響もあり、そこで掲載されているのを見て人気が出たり、花屋に問い合せしたりというのも増えているみたいです。そういった流れで市場や花屋から「こんな花を作ってみない?」など言われることもあります。そう考えると流通の流れというのが変わってきていると思います。花卉栽培において、年々、品目・品種ともに数が増えていて、それ以外にも自然の中にある草花や、庭木になっている花や実、野菜や果樹の花とかツルなどでも花束にしたときにキレイだなと思えるものは取り入れていきたいと思っています。

無理なく楽しみながらこだわりをもつ

花を栽培するうえで大切にしていることはありますか?

季節を意識しています。昔勤めていた花屋の尊敬する先輩が「オフィスの中でずっと働いている人が、飾られている花から季節を感じられるモノを届けるのが私たちの仕事」と言っていたのが今でも忘れられなくて、季節に合った色や品種を意識しながら栽培はしています。

あとは、楽しく仕事をしていくということを大切にしています。父と働いていた頃は、出荷に間に合わせるために朝早く起きて、場合によっては夜まで作業をするなんてこともよくありましたが、無理なく継続していくためにどうやっていけばいいかを考えるようになりました。その結果、自分たちに合った農業をしたり、作ったものに合わせて卸先を決めました。例えば、花にもそれぞれ特徴があって、病気になりやすいものは手をかけてあげて、強い花はさほど手をかけずに自然の力に任せて作業時間を減らしたり、大きさにバラつきがあっても、出荷先や用途によって必要とされる大きさがあるので、そこに合わせて収穫しています。

販売方法で意識していることは、花にストーリー性を持たせることです。生産者だからこそ、その花がどんな場所でどのように作られているかを伝えられると思います。買い手の人がそういったストーリーを感じながら飾ってもらえることは嬉しいですね。個人向けの直販は先代の頃からやっていましたが、ブーケや花束を注文いただいた時には用途や世代をまず聞いて、その用途やイメージに合った花を見繕い、場合によっては花が足りないようなら仕入れてきてアレンジしています。形も全体的に丸くすることにより、どの角度からも正面のようになり花がよく見えます。

普段の生活に花をとけこませる

品質にこだわって高価な花を生産することよりも、誰にどのように花を届けるかといった販売の意味合いでのこだわりを強く持っています。買い手と繋がり、話をすることで市場のニーズを探り、普段の生活に花をとけこませることを考えています。中島花キ園芸が力を入れていることとして、ドライフラワーを中心とした6次産業化への取り組みがあります。様々な草花がドライフラワー作家さんをはじめ、多くの方々の手で形を変え、多様な場面で生活に潤いを与えるお手伝いができればと考えています。また、インターネットでの販売だけでなく、実際に手にとって買い物ができる場として、作業場を改装したアトリエショップを準備中です。花や植物を使い、自然で遊ぶことの楽しさを伝えていけたらと思います。

中島花き園芸

  • 基本情報
    • 代表中島 和輝 従業員 3 名 
    • 所在地 南佐久郡佐久穂町大字海瀬3222 
    • MAIL email hidden; JavaScript is required
    • URL  nakajima-kakiengei.com
  • 取り扱い商品
    • 切り花、ドライフラワー、フラワーギフト全般、ワークショップなど
  • 販売先
    • 関東圏切り花市場、町内直売所、直売
2022年9月12日