りんご家SUKEGAWA

鮏川和明さん・理恵さん(東京都出身)
 鮏川夫妻は東京で生まれ育ち、音楽関係とスタイリストという農業とは畑違いの仕事に就き、全国を回り歩く日々だった。理恵さんは幼いころから祖父母が営んでいた小諸市のリンゴ畑に、秋になると収穫の手伝いに来ていた。途中から和明さんも手伝うようになり、自然やリンゴと触れ合うことで気分転換になっていた。出産、育児を機に地方に住んで、自然環境の中での暮らしや子育てに魅力を感じるようになっていった。いろいろと考えた結果、実家の東京に近い小諸市に移住することに決めたのは気持ちのどこかに、いつも手伝っていたリンゴ畑の開放感と心地良さがあったからだ。

「やってみないとわからない」からのスタート

移住してからの様子は?

理恵「最初は祖父母の畑を手伝っていたのですが、祖父から学びながら新しいやり方などは農業指導員の方や地区のリンゴ農家さんに聞いたりしていました」

和明「若い夫婦が移住してリンゴ畑を手伝っているという話を聞いた先輩農家の方達が顔を出してくれて、色々と教えてくれました。義祖父の指導法は剪定作業でも、「とりあえず思うように切ってみろ。実が多くできるか少ないかの差はあっても、ちゃんと実はなる」という教え方でした。失敗でも成功でも一年を通して一通り経験してみないと得られないことも多く、その経験を踏まえた上で周りのアドバイスを聞くと分かることがたくさんありました。もし、うちで働く人にどうすればいいですか?と聞かれれば、「切ってみればいいよ」というと思います(笑)。1年ほどした頃に義祖父が亡くなってしまい、その後2年間は家族や身内などみんなに手伝ってもらいながらやっていました」

お客さんの笑顔を楽しみに

独立して〝りんご家SUKEGAWA〞になってからの活動は?

理恵「昔から観光農園をやっていて、お客様が来て楽しそうに笑顔で収穫するという光景を見ていたので、私もそれがやりたいなと思っていました。一年に一度、収穫の時期に常連のお客様と毎年会えるのを楽しみにしています。あと、一昔前は晩生種のフジという品種が主流で、中生種の発送はあまりなかったみたいですが、中生種の〝旬の詰め合わせ〞を提案したり、リンゴ狩りに来て食べてくれた人が美味しさを知ってくれたりして、中生種の発送を希望してくれる方も増えてきました。なので、だいぶ品種も増やして、お客様の好みに合わせたリンゴを送れるようにしています」

和明「いろいろな味を試してもらいたいという思いもあるので、少ない量でも多品種を食べてもらえるように品種の選択肢は増やしていきたいとも思っています。今でも品種によっては1、2本しかないのもありますが、その品種が好きな人のために残してあります。リンゴを買うならSUKEGAWAさんだと言って、経験が浅い農家を選んでいただけるのはありがたいです。就農時にはまだそこまで農業に対する情熱がなかったのですが、経験を積んでデータが出来てくると来年はこうやってみようという意欲が出てきて、その繰り返しが楽しくてハマっているのを感じています。リンゴがどんどん好きになっていますね」

ここは楽園?

農園のこだわりは?

和明「一番は五感で楽しんでほしい。味がいいというのはもちろんですが、鮮やかな赤を目でも楽しんでもらえるように、葉はギリギリまで残したら「ありがとう」と摘み、キレイに実に色をつけるようにしています。直接発送のお客様ばかりなので、早めに収穫することはせずにしっかり味がのってから収穫して、す
ぐ送るようにしています」

理恵「巡るというのがキーワードになっているのではないかと思っているんです。お客様に直接送って、美味しいの声を頂けること。木の枝や葉っぱ、食用にならなかったリンゴが土に還っていって、それがいい土壌を作ってくれること。ここに来た人が気持ちよく過ごしてくれることで畑や私たちに良い影響をもたらしてくれること。そういったサイクルで農園が成り立っているんだなと気づきました。 よく、リンゴ狩りをしている人を客観的に眺めていると、ここは楽園?って感じることがあります(笑)」

※りんごの熟期によって分類される品種の呼び方。9月下旬から10月中旬に収穫されるリンゴを「中生種」と呼ぶ。シナノスイート、秋映、紅玉など

りんご家SUKEGAWAでは収穫期以外に農園を開放して講座やワークショップ、体験会を行う「りんごの学校」を開催している。始めたきっかっけを聞いてみた。

理恵「自分たちが作業をしていてとても気持ちの良い環境なので、他の人にも味わってもらいたいなと。あと、秋の収穫時期だけでなく、実がなるまでの畑の様子や面白さを伝えたいなと思ったのもきっかけですね。これまでにリンゴを使ったチャトニー作り、花の時期に写真講座ヨガやリンゴの草木染め、ステンドグラス作り、収穫カゴ作りなどリンゴに関わるようなことをやってきました。ここでやったことがきっかけで他の場所でもワークショップをやったり、作家さんがリンゴの木を使ってバードコールを作ったりと新たな広がりが生まれているのは面
白いですね。」

和明「屋号に〝家〞という文字を使ったのは、ここに来て、家にいるときのように安心してホッと過ごしてほしいという想いがあったので、集まれる場所として作りました。ショップではリンゴや商品を売るだけではなく、ちょっとお茶飲みに寄ってみるとかそんな場所になったらいいなと思っています。子育て世代のみなさんは夜に飲み行くとかなかなかできないと思うので、こういった場所で集って楽しんでもらいたいです。講座とかは女性が多いのですが、男性や近所の人も気軽に来てくれたらいいなと思っています」

理恵「それこそ音楽ライブなんてできたらいいですね。緑が気持ちのいい季節にアコースティックギターに裸足でタンバリンなんて、どうでしょう」

りんご家SUKEGAWA

  • 基本情報
    • 所在地:小諸市甲
    • MAIL:email hidden; JavaScript is required
    • Web:https://ameblo.jp/ringoya-sukegawa
  • リンゴ狩り
    • 10 月上旬~ 10:00 から日没まで
  • リンゴの学校
    • 収穫時期の10月~11月以外で月1回の開催予定
  • 販売先
    • 浅間のかおりなど
2021年12月5日